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悪魔小僧ぷくぷく・ふたたび
『うぎゅ』
何、今の音は。悲鳴、呻き声。
気のせいかな。ううん、絶対に聞こえた。
雛川真由はベッドから頭を少しだけ擡(もた)げて窓に目を向けたところで顔を歪めた。頭が重くて気持ち悪さを感じて起き上がることが面倒になった。同時に後頭部から首筋までズズズと痛みが走る。真由は眉間に皺を寄せて再び頭を枕へと戻すと天井をじっとみつめて嘆息を漏らす。
「踏むとは何事だ」
微かにそんな声が届き、妙に気になった。朝から喧嘩でもしているのだろうか。自分には関係ない。けど、さっき耳にした『うぎゅ』との音と『踏む』という言葉が頭の中で合致する。想像すると変だけど、きっと想像は間違っていない。
自分には関係ないこと。寝ていよう。そう思ってはみたものの、やっぱり気にかかる。確かめずにはいられなかった。
どんな人なのだろう。白黒はっきりさせないと気が済まない。その反面、動くことが怠いと思ってしまう自分もいる。
真由は額に浮かぶ汗を拭い、嘆息を漏らす。
「おまえは恩人を無下に扱うのか」
「おまえじゃないだろう。俺には田川大輝って名前があるって言っているだろう」
「うるさい、うるさい、うるさい」
どうしてこんなにも気になるのだろう。やっぱり確かめないとダメだ。一瞬、眩暈を感じたがどうにかベッドから起き上がり、一メートル向こうの窓へとゆっくりと歩みを進めた。ブルッと身体を震わせて小さく息を吐く。たった一メートルの距離なのに辛い。
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