第1章

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中学生になった頃には「狂犬」と言うあだ名がつけられていて、担任にしょっちゅう呼び出されている妻は学校中の人達にそう呼ばれている事を嫌がったが、私は息子が虐めの対象になるより増しだと思うので放っておく。 高校生になった頃、妻から息子のあだ名が「狂犬」から「ワンコ」に変わって、愛玩犬みたいで可愛いと教えて貰った。 息子も「狂犬」と言われていた頃より穏やかな顔付きになったように思う。 大学に進学して栄養学を学び調理師免許を習得して、卒業後都内の一流レストランに就職。 次に帰省して来るときは、伴侶となる女性を連れて来るのかと首を長くして待っていたら、大学時代からの親友だという男を連れて来て、爆弾発言をしやがった。 「お父さん、お母さん、僕達、結婚します」 息子の話しでは東京の病院で両性具有者と診断され、外見は男性だが身体の中に卵巣と子宮があって、妊娠も可能と診断されたとの事。 息子の子供である孫を抱いて、息子と差し向かいに酒を飲むのが夢だったのに、息子が生んだ子供を抱いて、息子の旦那と酒を飲む未来を想像すると、涙がとめども無く流れ落ちた。 台所から妻が万歳三唱しながら跳ね回っている音が聞こえる。 23年前子供が男の子と分かり落胆している妻を尻目に、万歳三唱しながら跳ね回った私に報復するように。 ワアァァァァーーン!!
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