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「はい、止めっ」
チャイムと同時に響いたその声に選択肢のaとbで迷っていた俺は勘でaに丸をつけた。
「ふわーっ終わったー!!」
試験監督が出て行ったと思った次の瞬間、変な奇声と共に翔太が飛びついてきた。さっきの化学のテストが意味不明すぎて頭の中を化学式が踊り狂っていた俺は、避ける余裕もなくその攻撃をまともに受けた。
「っでぇ!」
「時夜ぁー。俺もう死にそうだよー」
本気の涙目で泣きつく翔太に、周囲の男子がどっと沸いた。
「翔太はさぁ、パーソナルスペースっつーの?それが狭いんだよ」
「そーそー。時夜がビビってんだろー」
「え、時夜きゅんビビってんのー?かっわいー」
「はぁっ?ビビってねーし。ちょっと驚いただけだっつの」
都市とも田舎ともつかない町の中心部にある、ごく普通の男子校。一学期中間試験が終わり、生徒はみんな開放感に浸って笑う、走る、叫ぶと忙しい。そして垢抜けた五月晴れの空は教室の一端を明るく照らす。
「なぁ、これからカラオケ行かね?」
「おっ!乗った!」
「うぇーい!賛成っ!」
有岡の提案に、俺は真っ先に手を挙げた。他の奴らも、オレも、僕もと騒ぎ出す。
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