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「………………」
そして、直立したまま気絶するタケオ。
「そ、そうか。あまりの音量のデカさに驚いて……」
ハラエヤーは自分に言い聞かせるようにつぶやくと、腰につけている安っぽい水鉄砲みたいな銃をとりだした。脳みそを締めつけるような痛みに耐えながら、無防備なタケオに向ける。
「このチャンス、逃すものか」
「ごめんなさい」
そこに突如として、流れでるメロディに負けない、大きな声がとどろいた。ハラエヤーの近くにあったマンホールのふたがゆっくりと動き、中から一人の男が下水の悪臭とともに現れた。
全身スカイブルータイツに身を包み、胸には『めんご』と文字が刻まれている。怪しさの塊としか言いようがない。男は、のそのそとハラエヤーとタケオのあいだに割って入るように立つと、もう一度大声をだした。
「ごめんなさい」
腰を直角に曲げ、またも謝る。
「ごめんなさい」
「なんだ? きさまは。そこをどけ。邪魔だ。というか、このトンチキなうるさいメロディが平気なのか?」
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