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四日目の夜だったと思う。大粒の雪が降り出し、みるみるうちに辺りが白く色付き始めた頃だった。もう本当に体力も気力も限界で、あと一時間立っていたら、俺は確実に凍死していただろう。塀にぐったりともたれかかったまま、もうまともに頭も上げられなかった。
「……ずっと待ちます……」
「――もういい、分かった。入りなさい」
これほど待ち望んで、有難くて、嬉しい言葉があるだろうか。思わず涙で視界が滲んだ。
――だけど、声が出ないし、足が動かない。
反応が悪い俺を訝しんだ父親は、眉をひそめながら俺の額に手を当てた。
「……ひどい熱じゃないか」
体を支えられながら家の中へ通される。少し焦りを見せた父親は、玄関先から母親を呼び、和室に布団を敷くようにと指示した。
「……すみません。ありがとうございます……」
「負けたよ。とにかく休みなさい」
「すみません、……ごめんなさい」
この四日間、待ち遠しくて恋しくてたまらなかった、暖かい部屋とふかふかの布団。寝かされるや否や意識が朦朧とする。夢にいざなわれていく中で、父親が「勇斗、水筒に水を入れて持ってきなさい」という声が聞こえた。ああ、兄弟がいたのか、と、考えながら、深い眠りに落ちていった。
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