Ⅴ 究極の愛

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 ***  寝がえりを打って目を開けると、目の前にあったのは仏壇だった。キョロキョロと眼球だけで辺りを見渡し、ここが岡本晴斗の実家であると思い出すと俺はすぐさま飛び起きた。背中が汗で濡れている。  ――そうか、門の前で待っていて熱を出したんだっけ。  位牌の隣に飾られている岡本晴斗の遺影。いつのものか分からないが、少しはにかんだあどけない顔で笑っている。どこか親近感が湧くのは、祐之介の遺影を思い出したからだ。祐之介と岡本晴斗はちょっと似ているかもしれない。 「目が覚めた?」  岡本晴斗の母親が、薬と粥を載せた盆を持って入ってきた。 「昨日、ひどい熱だったのよ。あと少し声を掛けるのが遅かったら危なかったかもしれないわね」  母親は俺の額に手を添え、「下がったみたいね」と微笑んだ。あれだけ拒絶していたのに、この変わりようには少々うろたえる。
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