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半分の半分
中村は残り少なくなったアイスコーヒーのグラスを弄んでいた。
「なぁ、近藤くん、お前はこれからどうするんだね。」
中村は、向かいに座ったもう1人の男に声をかけた。
店に入ってから10分、一通りの挨拶と世間話を終え、2人の間には沈黙が訪れていた。
本題に入る頃合いだ、と中村は思った。
「お前とはこの数年間、仲良くやってきた。もちろん意見が食い違ったときもあった、喧嘩もしたが、2人で協力して乗り越えてきた。だが、今回の件は……」
中村はうまく言葉を見つけることができなかった。
どのような言葉も、今この場には、相応しくない気がした。
「中村さん、まずはありがとうございました。
思えば、勝ち目のない戦いだったのかもしれません。
中村さんだっていろいろなものを擬制にしてきた。
貴方の協力がなければ、我々は今回のような勝負に持ち込むことすらできなかった。
近藤は、いつもより心なしか饒舌だった。
中村は続きを促すように、ゆっくりと目を閉じた。
もういない妻や、孫のことが一瞬、頭をよぎった。
人が自らの間違いに気づくのは、いつも手遅れになってからだ。
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