味噌カツとメイド

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味噌カツとメイド

「いつもながら、見事な食いっぷりだねぇ」 店のオヤジさんは、そう言って、店のカウンター席で味噌カツ定食をむさぼり食うメイド姿の彼女に問いかけた。ここは、愛知県名古屋市、大須商店街。あの有名な大須観音がある場所だ。その商店街の中にある、トンカツ専門店、"カツしん"に伊東せな(いとうせな)は、メイド姿でいた。 小柄な身体に、似合わず食欲は旺盛だった。たちまち三百グラムの味噌カツを平らげ、更にご飯のお代わりを頼んでいた。 「人間、頭を使うと、エネルギーを消耗するのよ、おっちゃん!!」 せなは、そう言うと、赤だしの味噌汁を飲み干し、お代わりを彼に要求する。せなは、愛知県でも屈指の大学、名古屋大学の学生だ、学部は理工学部物理学科、親戚からは、変わり者で通っているが、本人はまるで気にしていない。 幼い時に父親を亡くして、苦労して育て上げてくれた母親の負担を軽減する為、彼女は地元の公立進学校から名大に進む道を選んだ。 今は、家計を助ける為に広場に面するメイドカフェでバイトに勤しむ日々を送っていた。そして、最近は地元、大須商店街の地域密着型アイドル、大須オーガニックドールズのリーダーまで兼ねる事になり多忙を極めていた。 そんな彼女の憩いの一時は、このトンカツ専門店、"カツしん"でのランチ。メイドカフェでの殺人的ランチタイムを終えて、自らのお腹を満たす為に、彼女はメイド姿のまま、暖簾をくぐる。ランチタイムも終わり閑散とした店内とはいえ、数組のお客様は居る。そんな中にメイド姿の彼女が入ってきて、特大の味噌カツを注文し見事に平らげていく姿は実に清々しい。
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