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「こう君見て。流れ星。」
「うわぁ、ホントだ。流星群がくるなんてニュースでやってたっけ?」
日本時間、21時38分より観測が始まった流星群は、途切れることなく光を降らせ続け、地球の反対側、ニューヨークが夜になった頃にも続いていた。
* * * * *
「あぁぁぁぁ!もうダメだぁぁぁ!」
「俺はうちに帰る。最後ぐらい家族と過ごすよ。地球はもうダメだ。お前らも帰るといい。」
世界最高峰の宇宙の研究機関も、匙を投げた。
どうにもならない。
その小惑星は、地球にぶつかる軌道には乗っていなかった。
地球の軌道に交差することが予想された当初は大わらわで、軌道計算の詳細な結果が出るまで気が気でなかったが、ぶつからないとわかった時点で安堵し気を抜いてしまった。
なにしろ、月と同程度の直径を持ったその小惑星が、もし地球に直撃したなら、津波や氷河期程度ではなく、その瞬間に地球は割れてしまっていただろう。
その証拠に、実際にその小惑星と衝突した火星は、体積の実に三分の一ほどの破片を飛ばし、本体は軌道を外れていったのだから。
そう。その小惑星は火星と衝突したのだ。確かに地球にはぶつからなかった。
しかし、その結果に満足しているうちに火星と衝突したのだ。
誰も予想していなかった。小惑星が火星に衝突し、その大きな破片が、地球に飛来するなど誰が予想しただろう。
小さな破片は、既に地球に到達し、流星雨となって降り注いでいる。
世界中の人々は、この後火星の破片が大きな隕石となって地球を滅ぼしにくるなどと考えることも無く、その幻想的な光景に見入っていることだろう。
地球最後の夜は流れ星で埋め尽くされていた。
ある者は恋人との永遠の愛を、ある者は受験の合格祈願を、ある者は家族の健康を。
人々は、地球を滅ぼさんとする隕石達に願いを乗せる。
ついにその時が来る。世界中の幾千の願いは、幾千の光と共に消えた。
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