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「すいませーん。急患です、ここ開けてくださーい」
「はいはい?」
ペタペタとスリッパの音が近づいてきて、ドアがからりと開かれる。
中から出てきたのは、眼鏡をかけた気だるげな男性保険医。
・・・・・・攻略対象の白木 礼二(しらきれいじ)先生だった。
白木先生はわたし達を見て赤い瞳をちょっと見張ると、すぐににやにやとした笑みを浮かべた。
「おやおや、なんだか面白そうな組み合わせですね。さあ、中へどうぞ」
「別に、面白くはないと思うっすけど、失礼します」
入り口で礼儀正しく一礼して、北川くんは保健室に入ると、すぐにベッドにわたしを座らせてくれた。
「ありがとう、北川くん」
「どういたしまして。それじゃあ、俺はもう行きますんで。あ、そうだ」
踵を返しかけて立ち止まり、北川くんはわたしを見た。
「名前、教えてもらってもいいっすか?」
「あ、ごめん。まだ言ってなかったね。わたしは二年の相沢美月」
「相沢先輩、すか。・・・・・・じゃあ、また」
小さく笑って北川くんは出ていった。
いいなあ、なんか。
・・・・・・ログアウトして普通のゲームが出来るようになったら、北川くんを攻略しようかな、なんて。
目眩も忘れて、ほっこりしてしまう。
でも、そんなほんわかした空気は、北川くんが出ていって扉が閉まるとすぐに霧散してしまった。
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