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強く両肩を掴まれ、壁に押し付けられた。
「なんでだよ、なんでわかってくれないんだよ・・・・・・っ」
わたしを見つめる漆黒の瞳に狂気の炎が揺らぐ。
肩に置かれていた手がゆっくりと首に伸び、締め付けられる。
あ、これは駄目だな。
そう考えながらも、わたしは【震える声】で彼を制止しようとした。
「あ、東くん・・・・・・」
「そんな声で僕を呼ぶな!!」
やばい、選択肢間違えた!
首にかかる手がいっそう強くなる。視界が白くなってゆく中、そっと、額に柔らかい何かが触れた。
「殺して、キスって。うわー、どん引きだわー。東くん、こーいう人なのかー」
バットエンドの音楽が流れる中、わたしは大きく伸びをしてヘッドギアを外した。
とたんに、そこは見慣れたわたしの部屋になる。
仮想現実、VRゲームが主流になった今の時代、乙女ゲームもVRになっている。
今わたしがプレイしていたゲーム『あやし、あやかし』もそうだ。
主人公は妖怪の祖母を持つ平凡な女の子。
両親の転勤をきっかけに田舎に住む祖母のもとで暮らしはじめ、そこであやかし達との交流が始まるーーと、こんな感じのストーリーである。
あやかし達は皆美形だし、ただの人間であるクラスメイトだって、負けないくらいイケメンだ。
先ほどのようにちょっと病んでる人もいるけど、年齢制限はR15だからそんなにキツいシーンは入らないしね。
キスシーンだって、有り、無しが選べる安心設定。
まあ、どうせ頬か額にするくらいだから、有りにしてるけど。
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