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何かがおかしい。
ゲーム序盤のイベントをこなし、休み時間の今、私はベンチに座ってしかめっ面をしていた。
その理由は、なんだかゲームの進行がいつもとは少し違うせいだ。
心当たりはある。
「・・・・・・やっぱり落としちゃったせいかな」
ログアウトして修理に出すべきだろうか。
うう、いったい幾らかかるやら。
はあ、と重いため息をつきながら、メニューコマンドを開こうとしてーー
「ん? ・・・・・・あれ、出てこない? おかしいな、そこまで壊れていたわけ?」
何度開こうとしても仮想ウィンドウすら出てこない。
わたしは緊急連絡用のチップが内蔵された時計の方を起動しようとして、気付いた。
わたし、時計していない。
必ず付けている事になっているはずの、リアルに繋がっている時計が、無い。
「え、嘘でしょ? まさか、そこまでバグがあるわけ・・・・・・」
じわり、と不安が心を侵食してくる。
早鐘を打つ心臓を宥めるように胸に手を置き、ひとつ深呼吸をした。
うん、落ち着こう。
・・・・・・流石に部屋でずっとゲームをしていたら、お母さんかお兄ちゃんが起こしに来るはず。
そうしたら、ギアを外すなり病院に連れて行くなり、してくれる。
うん、よし、大丈夫だ。
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