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「・・・・・・それまでの我慢だよね」
「なにが?」
「うひっ!?」
「おっと危ない」
小さく呟いたとたん声をかけられ、あやうくひっくり返りそうになる。そんな私を、誰かが助けてくれた。
「あ、ありがとうございます・・・・・・あ」
そこに居たのは、長身で引き締まった身体の格好良い男子生徒で、深い赤色の髪と鋭い鳶色の瞳に見覚えがあった。
この人は。
「疾風、じゃなくて石塚先輩・・・・・・」
「ん? 俺のこと知ってんの?」
怪訝そうに首をかしげているのは、攻略対象の一人である、石塚 疾風(いしづか はやて)先輩だった。
明るくて飄々とした性格で、実は鞍馬天狗。
主人公の祖母とは古い知り合いという設定だ。
彼のルートはまだ途中までしか進められていないので、これ以上はわからない。
「えーっと、クラスの女子が話していたのを小耳にはさんで・・・・・・」
「小耳に? 若いのに、古臭い言い方するのな」
楽しげに笑う石塚先輩に、わたしは引き攣った笑みを返す。
いや、だって。
・・・・・・この人、ゲーム時間で三日は経たないと出てこないはずなんだよ?
なんで初日に出てきてるの?
それに・・・・・・今の状態で誰かのルートに入っちゃって、バットエンドになったらどうなるの?
そう考えたとたん、ぞっとした。
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