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駄目だ。
今回は誰とも仲良くなりたくない。
この会話も早く終わらせなきゃ。
「俺の事は知ってるなら、自己紹介は無しだな。んで、そっちは? そのリボンの色は二年だよな?」
「・・・・・・転校してきた、二年の相沢 美月(あいざわ みつき)です。さっきは助けていただいて、ありがとうございました」
「相沢ね。別に、あれくらいいいさ。それに、堅苦しいのは好きじゃないから、敬語も気にしなくていい。・・・・・・それより、我慢ってなんだ?」
「え?」
「さっき言ってただろ。それまでの我慢とかなんとか。・・・・・・何か困っているのか?」
「・・・・・・え」
「俺で良かったら、力になるぞ?」
・・・・・・聞かれてた。
わたしはぎごちなく笑みを浮かべて首を振った。
「いえ、あの。て、転校してきたばかりで、いろいろと不安で・・・・・・でも、すぐに慣れると思いますから、その。それまで我慢だなあ、と」
「ほー、なるほどな。まあ、ここで会ったのも何かの縁だし。困ったことがあれば、いつでも頼ってくれよ」
そう言ってくれる石塚先輩に、ちょっとだけ良心が咎める。うう、嘘ついてごめんなさい先輩。
いや、いろいろ不安なのは、嘘じゃないけど。
「はい・・・・・・ありがとう、ございます」
「いいって。じゃあ、俺はもう行くとするか。次、体育なんだよ」
「そ、そうなんですか。じゃあ、わたしも・・・・・・」
よ、良かった。これでようやく、この緊張感に満ちた会話を終えることが出来る!
そそくさと立ち去りかけたわたしだったが、ふいに呼び止められた。
「相沢」
「は、はい?」
振り返ると、石塚先輩はどこか不敵な微笑みを浮かべていた。
「言い忘れてた。この黄昏学園へ、ようこそ。・・・・・・これから、よろしくな」
その言葉に、何かが含まれている気がしてならない。
それでも。
「・・・・・・はい。よろしくお願いします」
わたしには、そう答えることしか出来なかった。
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