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第二話 若紫
私は若紫。
初めてお兄ちゃんに会った時、
光輝いた人に見えたわ。
まるで天上人。
とても綺麗で素敵な男の人だと思ったの。
物腰もお上品で。
お声もウットリするくらい素敵。
自然に胸が高鳴ったわ。
お兄ちゃんは確かに私を見つめていた。
とっても優しい目で。
…でも、何故かしら?
私を見ているようで、
私を通り過ぎて遥か遠くを見つめている感じがしたの。
…気のせい、よね???
ある日ね、
目を覚ましたら、
お兄ちゃんが隣に寝ていたの。
ビックリしたわ。
…長い睫毛。綺麗に整ったお顔。
ずっとずーっと見つめていたい、そう思ったわ。
そしたらお兄ちゃんは、パッチリと目を開けて
「今日からここが、君の家だよ」
て優しく笑いかけたの。
素敵な笑顔…本当に天上人のようだったわ。
なんだかよく分からなかったけれど、
お兄ちゃんとずっと一緒に居られるなら、
て嬉しく思ったわ。
…不思議ね。不安にならないって言い切ったら嘘になるけれど、
何故かとても安心できたの。
光君(ひかるぎみ)は、それからずっと私と遊んだり、
素敵な大人の女性としての嗜みや、
お琴やお習字や和歌、そして世の中の事、
色々色々繰り返し繰り返し教えてくれたわ。
そしてね、ある時
「君を見ていると、紫を思わせる。
知ってるかい、紫色はとても高貴なお色なんだよ。
君の事は『若紫』と呼ぶ事にしよう」
夢見るようにウットリと私を見つめて、
光君はそう言ったの。
とっても嬉しかった。
光君が望むような女性になりたい!
心からそう思ったわ。
…でも、何故かしら…?
やっぱり彼は、私を見ているようで…
どこか遠くを見つめているように感じたの。
でも、私頑張る!!
いつか光君が、私だけを見つめてくれるように。
彼の瞳に、私だけが映し出されるように…。
光君が望む、彼が理想とする女性に、私はなる!!!
そう決心したの。
…待っててね。あなたが望む女性になって見せるから。
その瞳に、
私以外の女のヒトを映せなくなるくらいに、
あなたを魅せる女性になるから…。
だから、どうか待っていて。
お願い。
どうか誰の事も、本気で好きにならないで…。
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