あるかたに捧ぐ

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あるかたに捧ぐ

「不満があってもいいじゃん。」 こんなことを言ってはいけないと自分で見ないようにしてきたのに、あってもおかしいことではないのだからそれを隠す必要などない。打ち明ける相手さえ間違えなければ別にいいと思うと言われてしまった。 「待って。私は幸せだよ? でもね……」 「不幸だなんて言ってないよ。満たされない心に気が付いてしまっただけだよね。それって悪いことなのかな?」 何の疑いもなくここまで来てしまった。そういうものだと刷り込まれていたので疑問を持つことがなかったけれど、突然訪れてしまった心の衝撃はいまだかつてない経験で、どうしていいのか分からないのが正直なところなのだ。 「海華ちゃんが今までしてこなかった経験を今しているだけだと思うんだよね。」 彼女は電話でそう言った。年下だけど恋愛経験は私よりあるのだと思う。
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