半分

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半分。 私は、半分。 産まれた時、一卵性双生児の妹は助からなかった。 助かった私も危険な状態。母に抱かれる間もなく、集中治療室へ入れられた。 助かる、助からないが、確率半分。 私はなんとか生き延びた。 父はいない。母と二人暮らし。 貧しい生活、でも楽しかった。 母とおにぎり半分こ、ひとつの布団を半分ずつ。 小学校、中学校、楽しい思い出と悲しい思い出も半分。 貧乏や片親であることなどで心ない人たちに苛められた。 でも、優しい人たちに守られ、励まされた。 高校には行かずに、近所の工場で働いた。 辛いことと嬉しいことが半分。 仕事はキツく、毎日クタクタだった。 でも、お給料が入れば、母の助けになる。 好きな人ができた。 同じ職場の人。 でも、その人は結婚していて、子どももいる。 一緒にいて、嬉しい気持ちとせつない気持ちが半分ずつ。 ある日、違う男性に告白された。 戸惑いと、嬉しさが半分。 好きだった人を諦めなきゃいけない。でも好き。 告白してくれた人は、恋愛対象と思ったことはなかった。でも、とても誠実な人。 交際するか、しないのか。迷ったけれど、断った。 好きでもないのに、付き合うなんて。 狡さと打算が半分ずつ。 母が病気で亡くなった。 ずっと苦労してきた母、私をたったひとりで育ててくれた母。今まで本当にお疲れさま。ありがとう。 悲しみ半分、感謝が半分。 これで私は、一人きり。 淋しさと解放感が半分ずつ。 工場の仕事は辞めた。 新しい人生を始めるために。 期待と不安が半分ずつ。 これから、いったいどうなるだろう。 それでも私は、前に進む。 私の人生、ともに半分ずつ分けあえる人を見つけるんだ。 出会える、出会えない、たとえ確率半分でも。
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