わたしと親友とケンタウルス

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*  初めて彼を紹介されたときは、大層たまげたものだった。今まで生きてきて驚いたことランキングベストスリーに入る。  頭も良く楚々とした美人だが、おっとりとしていて恋愛に関しては奥手だった小百合。  そんな小百合に恋人ができたというから、どんな男かと思って聞けば、旅行先のイギリスで出会った人だという。  え、まさか外国人?と、その時点で少し面食らっていたが、続いて躊躇いがちに告げられた小百合の言葉に、目が点になった。 「あのね、驚かないで聞いてほしいのだけど……彼、ケンタウルスなの」 「……? …………??」 「そうよね、日本じゃ珍しいものね。わたしも、彼に初めて会ったときは少しびっくりしたもの……。でも、とても優しくて誠実なひとよ。だからね、詩子にも会ってほしいなって思って……」  何も言ってないのに、あわあわと早口で喋り出す小百合を、わたしは頭に大量の疑問符を浮かべながら見る。  いやなんだよケンタウルスって。  なにかの比喩だろうか。ケンタウルス。ケンタウルスって、なんか上半身裸で筋骨隆々なイメージがある。  つまり……ムキムキな彼氏ってこと? 足が速いとか?  それとも馬面ってこと? 馬面って言いづらくてケンタウルスというオブラートに包んだの? どういうことなの小百合……。  別に馬面でも気にしないよむしろ日本じゃ珍しくもないよ、大事なのはハートだって昔誰かが言ってたヨ……。  とりあえず「大事なのはハート」の部分を小百合に伝えると、小百合はパッと声を明るくした。 「今度彼が日本に来るの。そのとき、彼に詩子を紹介してもいい?」 「うん。わたしも小百合の彼氏、会ってみたいしね」 「ありがとう!」  小百合は無邪気に喜んでいた。  思えばこのとき、写真なりなんなり見せてもらえばよかったのだ。
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