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数日後、引き合わされた彼の姿を見て、わたしは驚いた。
現れたのは、栗色の髪に鮮やかな碧の瞳。濃い眉に彫りの深い顔立ちの、ものすごい美形だった。
全然馬面じゃない。いや、というより、美形だとか馬面じゃないとかそんなことは全く問題じゃなかった。
彼の容姿は……なんとも形容しがたいというか、いや形容できることはできるがいいにくいというか。
ものすごくオブラートに包んで言えば、彼の脚は四本あった。
ストレートに言えば下半身が馬。
どう見ても馬。二度見しても馬。腰から下が馬。彼が動く度に鳴る、軽やかな蹄の音が耳に心地良い。
茫然とするわたしに、小百合はにっこり笑って、
「えっと、紹介するね。彼が、お付き合いしてるリギルさん」
と言ってから、彼に向かって英語で『わたしの親友の詩子よ。前に話したことあるでしょう?』みたいなことを言った。
国籍や人種どころの話じゃねぇ、種族越えてきた。
なにこれケンタウルス? ケンタウロス? 弓矢とか持ってるやつ? 星座とかになってるやつ? ファンタジーの住人じゃないのケンタウルス。
「彼、ケンタウルスなの」ってガチの意味だったの小百合。
小百合ったらイギリス行ったとか言ってたけど、間違えてナルニア行ってきちゃったんじゃないのかしら。昔からしっかりしてるようでうっかりしてるからな小百合。
それとも、わたしの周りにいないだけで、普通にいるのケンタウルスって。ペガサスもユニコーンもケンタウルスもフォーンも実在するというのか。
っつーかデカッ。馬より高い位置に顔がある。存在感と威圧感ハンパない。顔が丁度逆光になってて、彫りの深い顔が恐いことになっている。
そもそもケンタウルスにどう接すればいいのかわからない。未知との遭遇。なんて言えばいいんだ。
対応を誤ったら「下等な人間ふぜいが! この孤高なるケンタウルスである私に対してなんたる無礼な!」とか言われて蹴り殺されるかもしれない。
ケンタウルスに対する認識をまったく間違えてる感は否めない。
混乱の極みに達したわたしの、彼に対する第一声は、実に無難なものだった。
「は、はじめまして」
「ハジメマシテー」
緊張でどもるわたしに、彼は輝く白い歯と片言の日本語で返してくれた。
ケンタウルス、意外と気さくだった。
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