わたしと親友とケンタウルス

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*****  誰もいない砂浜を歩く。  なんとなく、そのまま帰る気になれなかったから。酔い醒ましもかねて、歩いていた。いや、そんなに酔ってはいないけど。  夜の海。波の音と潮風は気持ちを落ち着かせる。  親友のことを考える。  はじめはどうなることかと思っていたが、今のところ小百合は幸せそうだ。これからもそうであってほしいと思う。  それに、親友の恋人がケンタウルスであることに対して、もとよりわたしはとやかくいえる立場ではないのだ。  そう、『わたしは』――。 「……」  なんだか無性に泳ぎたい気分だ。  適当な岩場を見つけ、誰もいないのを確認する。履いていたヒールを脱ぐと、わたしは服を着たまま海に飛び込んだ。  まだ知り合って間もない頃、碧の目のケンタウルスは言った。小百合は席を外していて、少しの間だけ二人きりになったときだった。 『――どうしてサユリが、僕に声をかけたのか不思議に思っていたんだけど、君がいたからだったんだね』  ゆったりとした英語で告げられた言葉を一瞬はかりかねたが、理解した瞬間、心臓がギュッと縮こまったような心地がした。  ――なんで。どうして、  今のわたしは、どう見たって『人間』と同じ姿のはずなのに。 『……小百合から、聞いたの?』 『いいや。なんとなくわかっただけ。サユリからは、ウタコは高校のときからの親友だと。君との思い出話以外は何も聞いていないよ』 『そう……』 『……隠しているんだね。知っているのは、小百合だけ?』 『ええ。他は誰も知らないわ。わたしが――』
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