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木崎の過去を聞いてから1週間が経った。
俺はあいつのことを泣かせようと必死だった。
子犬のドキュメンタリーDVDを見せたり、俺の感動した話を聞かせたり色々やってはみたけど、ことごとくダメだった。
誠意を持って泣かせる、というのは難しいことだ。
「そんなことで泣くわけないでしょう」
まあ、そうだよな……。
振り出しに戻った気分だ。
「それに無理して泣かせようとしなくていい、私はこのまま一生涙が出なくてもいいと思ってる」
無理にではない。
もともとこれが俺の目標だったわけだし。
そんな事をいいつつも、少し寂しそうな顔をしている木崎をみて本当はそう思ってなんじゃないかって悟った。
どうやったら泣かせられんのかな。
出来れば傷つける以外の方法がいい。
気づけばそんなことを考えている自分がいる。
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