サドルが輝くそんな夜に

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一服してちょっと待ってみるとするか。タバコと携帯灰皿をバッグから取り出し、タバコに火をつけた。ゆっくりと吸い込み、大きく煙を吐き出す。ふー。煙は夜の空に広がり、闇に溶けて消える。 メッセージが既読になった。起きてはいるみたい。 「起きてるよ。何?」 なんだか、そっけないなぁ。付き合って2年が過ぎた。1年前だったら、こんな時間にメッセージしたら心配してすぐに電話くれたのに。 「今帰り」 「そう、おつかれ。ゆっくり休みなよ」 「来週の日曜日どうする?」 「たぶん仕事」 …誕生日を忘れてる?そんなはずない。サプライズとか用意してるのかな?ちょっとイジワルしてみるか。 「私も仕事なんだぁ(涙の絵文字)」 「そっか。まぁいつでも会おうと思えば会えるからな。また次の週にでも(ニッコリ絵文字)」 オイッ!こりゃほんとうに忘れてるんじゃない?? 「バカッ!!!!」 「何?どした??」 だめだ…本当に忘れてるっぽい。もう知らない。スマホの電源を切った。 さて、どうしたものか。 相変わらず、私の自転車にはサドルがない。
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