サドルが輝くそんな夜に（11作目）

サドルが輝くそんな夜に

もう隣の自転車のサドルを取っちゃおうか。

いや、やめておこう。

もしかしたら、隣の自転車の持ち主も女の子で、同じように彼氏にサドルをねだろうとして最悪の結果を招くかもしれない。

不幸の連鎖が続くのは阻止しなきゃ。

ブロロロロー！目の前の道を獣のようなけたたましい音を垂れ流しながら、バイクが横切る。うるさいなぁ。猟師に銃で撃たれればいいのに。ついでにサドルを盗ったやつも、チャーシューを1枚入れ忘れたやつも、彰も、まとめて撃ってほしい。

サドルがあった場所にある空洞を見ていたら、無性に何かを入れたい気分になってきた。ゆっくりと近づき、なぜか辺りを見回し誰もいないのを確認して、そっと吸い殻を入れた。あの吸い殻はきっともう誰からも見つけられることはないだろう。