サドルが輝くそんな夜に

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さて、そろそろ帰ろ。 サドルなしで、家まで立ち漕ぎで帰るか…うーん。さすがに26歳の乙女が、サドルのない自転車で立ち漕ぎはなぁ。 じゃあサドルがあるつもりで、筒に座って帰るか…おしり痛くなりそうだなぁ。もしも変な趣味に目覚めたらいやだし。 困り果てて、夜の空を仰ぎ見た。 夜空に星が瞬いている。星なんて見るのいつぶりだろう。こんなに綺麗な星が毎日そこにあった事を忘れていた。自転車のサドルもいつもそこにあったんだ。 「いいサドルを買ってくれる、関本さんのような彼氏ができますように」 なんとなく夜空に願った。 3月末。夜の風は少し冷たく、つかれた体をそっと包む。 さてと、ビールでも飲みながら歩いて帰るか。 新しい風が吹くのを待って、帰路についた。
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