第1章

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 確かに小熊を放っておくわけにはいかないし、町の人々も気になる。 「どうしたらいい?」 「科島は頭がいいはずだ。そう、俺よりもね」  私は雪の皮肉なのか考えなのかを見抜こうとしていた。  雪は机に人差し指をトントンと置いては、ニコニコしている。 「どうするの? 私は今から小熊を助けるのは難しいと思う。町の人々は電子書籍の方がいいって、判断したのだから。それが正解じゃないかしら」  雪はニッコリして、こう言った。 「明日は金曜日だよね。都合がいい。早朝に新宿の東口へ来てくれないか?」  新宿の東口へと改札口を抜け、道路へと息を弾ませて走るころには、ようやく考えがまとまってきた。  雪の考えに賛成だ。  そう、本を広めるんだ。  時代遅れな本だが、電子書籍のように広められれば。  良さを知ってもらい。そして、いつも読めるようなものなら。  町の人々も考え方が変わるはず。  ただ、膨大な文字の羅列の便利な電子書籍には、本が勝つのは難しいのかも知れない。けど、ちょっとした何かがあればそれでいい。  その答えが雪と共に目の前にあった。  雪は軽トラックの脇で缶コーヒーを振っていた。  軽トラックの運転席には小熊がいる。 「これなら、便利だろ。小熊が俺がやるといってくれてね。今のところは勝率は半分半分だ」  本が時代に対抗した。  人の手によって。  人の繋がりによって。  私たちはこれから毎週金曜日に方々の家に向かう。  本の押し売りではなく。  ただ、知ってもらいたいだけ。
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