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ふと時計をみると、すでに11時を回っていました。二人とも終電があるので、今回はここでお開きということになりました。お代は一応彦星が持ったようでした。
外に出ると、2人は同時に空を見上げました。そこには満点の星空が広がっています。七夕の夜にふさわしい、それは本当に素晴らしい星空でした。
ふと彦星が隣をみると、織姫が両手を合わせて目を瞑っています。
「何してるんだ?」
「星空に願い事してるの」
「ありゃ俺らが20年前くらいに出した光だろうが」
「もー彦星ってホント空気読めないよねー」
「お前に空気どうこう言われる筋合いはねぇよ。で、何お願いしたんだ?」
「うーんとね、お父さんが良くなりますようにって」
織姫がちょっとだけ照れくさそうな表情を浮かべました。こんな顔はあまり見せないので、彦星の方も少しだけドキッとしてしまいました。
「そっか」
「うん」
彦星はもう一度星空を見上げました。
「お前のオヤジの頑固具合も少しは良くなってもらいたいもんだけどな」
「でも、なんだかんだ言ってお父さん、彦星のこと好きだと思うよ?」
「そうかー?」
「うん」
やけにキッパリと断言する織姫に、彦星は少しだけ複雑な気分になりました。さっきまで思いっきり悪口を言っていただけに、ちょっとだけバツが悪く感じてしまったのでした。
親の心子知らずと言います。彦星にとって天の神様は実の親同然でした。故にいくら憎まれ口を叩いても思うところはあるようです。
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