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「うっし、充電完了!」
「バカかよ」
「彦星顔真っ赤じゃん」
「赤くねぇし」
「かわいいなーこのー」
ツンツンと胸のあたりをつついてくる織姫に対し、彦星は如何ともしがたい感情を抱いていました。だけど、それを口にすることはしませんでした。それをしてしまうと、自分の中にある何かが箍が外れたように暴走してしまいそうな気がしたからです。
だから、彦星は何も言わず織姫の頭を優しく撫でました。言葉にできない自分の気持ちを少しでも伝えるために。
織姫も彦星の気持ちを察してか、撫でられている間、何も言いませんでした。その顔は照れくさそうな、だけどどこか心地よさに満ち溢れたような、そんな表情を浮かべていました。
そして、彦星の手が離れると、一転敬礼のポーズをとり、勢いよく彦星に背を向けてその場を走り去って行きました。
彦星は今度こそその小さくなっていく背中を最後まで見送りました。そして心の中で静かにこう誓うのでした。
来年、また会うために頑張ろう、と。
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ちなみにこの時、彦星と織姫のリア充っぷりをたまたま見ていた大学生の田中君が彼らのその姿に奮起して、好きな女の子に告白し幸せになったこと。
どこかのクソ野郎が無事奥さん以外との肉体関係が断絶できたこと。
そして、ある少年のお父さんの病気がすっかり良くなり、その少年に笑顔が戻ったことはまた別のお話。
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