花埋め

11/11
前へ
/11ページ
次へ
 だから。  時々、達郎は「家族」を使うのだ。  娘から連絡があった時、必ず体を重ねることを拒もうとする。  何故なのだろう。そう、思う。  何故俺達は共にいるのに、満たされないのか、と。  ただ。それでも、俺は達郎と離れることはできない。  だから。 「俺は、お前がいればいい」  俺は、達郎の耳元にそう囁いた。  その瞬間。  達郎は、顔を覆っていた手をゆっくりと広げ、俺の首筋に縋り付いてきた。  それから、俺達は唇を重ねる。  埋まらない空虚を埋めるたに。  体を重ねて、言葉を重ねて。  いつか、この空虚は埋まるのだろうか?  達郎と言う、存在で。空虚を、花で埋めるように。  達郎の体を抱きしめながら、俺はそう思ったが、次の瞬間。  その熱い身体に溺れていった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加