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「赤ん坊のことか?」
そう言うと、今度は両手で顔を隠す。
「うれしいと言えば満足か?」
そして次にそう尋ねると、何も言わなかった。
自分の妻と再構築をすることを選んだ達郎は、その間、俺とは会わなかった。
けれど。三月も持たなかった。
俺と会わなくなって、短期間で廃人も同然になっていく達郎を見て、達郎の妻は離婚を決意したらしい。
『妻とは離婚した』
三ヵ月後、達郎からそう携帯に連絡があって、その直後に俺達は一緒に暮らし始めた。
そうして、今。
俺達は、互いの存在に溺れている。
互いの存在を全てとして、生活している。何も憂いはない。
妻も子も、いない。
互いを縛る物は何もない。
だけど。俺達は、足りなかった。
三ヶ月離れていたせいなのか、夜毎狂ったように抱き合っても、仕事以外では一緒にいても、何かが足りなかった。
まるで、魂の半分が欠けたかのように。
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