花埋め

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「それは良かった。おめでとう」  穏やかな声で、達郎(たつろう)は携帯越しにそう言った。  もともと、外見も性格も穏やかな男だから、その話し方は達郎の雰囲気にぴったりだった。  その穏やかな話し方の中に、はしゃいただ気分が混じっている。 「うん……うん、うん。わかった。澪(みお)も体に気をつけて。義臣(よしおみ)君にもよろしく伝えてくれ」  義臣とは、俺の息子の名前だ。  ちなみに、澪とは達郎の娘の名前だ。  達郎の娘は、折に触れてよく携帯に連絡して来た。  俺の息子が全くして来ないのに、えらい違いだった。  もっとも、息子の方からは、『もう、家族とは思わない』と言い渡されている。 俺が、「自分の父親」に戻ることはない、と見切りを付けたのだろう。
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