花埋め

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 妻と離婚して三年になるが、その間一度も息子とは会っていない。  近況は、もっぱら達郎の娘から聞かされていた。  達郎の娘の方は、俺の息子とは違って、どうやら父親と連絡を取ることで、家族の絆を取り戻そうとしているらしい。 「何だって?」  携帯の通話を切った達郎に、義理でそう聞いた。 「赤ちゃんができたらしい」  いつも物静かな声が、妙に弾んでいる。 「そうか」  俺は、ビールを片手に頷いた。 「義明(よしあき)?」  そんな俺に、けげんそうな顔を達郎はする。 「うれしくないのか?」 「自分の年齢(とし)を実感させられる事実を、報告されてもな。それにお楽しみ中に、水を差されてしまったし」
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