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「あー聞いた聞いた、いいなー俺も誰かに代わってもらおうかなー」  いや支配人はだめでしょ、だよなあ、という話をして、すっかり人のいなくなったロビーを閉める。乗り過ごして遅刻しても嫌だしカプセル泊まるわ、と言う支配人と始発の動き出した街を途中まで一緒に歩く。しじみのような目をした支配人と南口で別れて普段はあまり使わない各駅停車に乗り込んだ。今の時間なら座れる上に何より長く寝てられる。五分後に出発するというアナウンスを聞いて目を閉じた、ところまでは覚えている。「お客さん、終点ですよ、お客さん」  肩を揺するように叩かれて目を開けた。ガラガラの車内には自分ともうひとり、ふたり。目を開けたから終わったとばかりに駅員さんは離れて、寝ているもう一人を起こしに行った。 「・・・・・・どこだ、ここ」  行き先を回送に変えた電車に追い出され、ホームに掲げられた看板を見るとひとまず知っている地名だったことに安堵する。埼玉のどこかだ。どのへんかまでは知らないし、そもそも反対方向の電車に乗っていたらしいことに今気がつく。 「・・・・・・はぁ、・・・・・・」     
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