ぼくらの犯した罪の半分

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 Kへのプロポーズは2週間後、6月第2週の水曜日に決めたと書いた。  その日はお互い休みなので、どこか特別な場所へ行くつもりだとした。  ぼくもその日に休みを取った。  人がそれほど多くなく、行きやすい場所はないかと考えた。広すぎる場所はよくない。時間がきっちり決まっている必要がある。  あれこれ探しているうちに、これしかないと思えるイベントをみつけた。ぼくらの住む町で紫陽花寺と呼ばれる有名な禅寺があった。そこで、二週間後の水曜日から有名な華道家の作品展が始まる。初日には本人も来ると書いてあった。時間を決めて握手会もあるようだ。僕はさっそくチケットを手に入れた。  Sの家で食事をした日に「取引先にもらった」と言ってチケットを渡した。「彼女花屋さんだろ」と言うと「あれ話したっけ?」と返ってきた。「酔った日に、自慢されたぞ」と誤魔化した。  翌日には「彼女、生け花? の先生に会えるって、驚くくらい喜んでた。ありがとう」と連絡がきた。  そこでぼくは、あらかじめ撮影しておいたチケットの画像をブログにあげたのだ。  『彼女は、あこがれの先生に会えるのを楽しみにしている』と書いた。  
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