ぼくらの犯した罪の半分

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 ぼくは一度、Sの家に泊まった。仕事で失敗をしたとSの母親に打ち明けると、親身になってくれた。「飲んでパーッと忘れたくても、一人だと余計に虚しくなる」思惑通り、Sの家で飲むことになった。途中から帰宅してきたSも巻き込んだ。目的は、Sを酔わせることにあった。  ぼくは早々に酔ったふりをして、Sに軽く絡みながら飲ませた。Sが酔いつぶれた頃には泊めてもらうことになっていた。  その晩、Sのスマホに入ったSDカードから、自分のスマホにいくつかの画像を取り込んだ。欲しかったのはSの顔写真だった。同僚と思しき人物と酔って撮った写真しかなかった。自撮りをするタイプではなさそうなので、仕方ないと思った。別の女とのツーショットなどは、残念ながらみつけられなかった。あれば欲しかったが、Kの写真もなかった。それはそれで、二人の付き合いが浅い証明にもなり嬉しかった。  次の夜、オンラインゲームをしながら「酔っぱらって、自撮りした顔が笑えた」と、Yに話題をふった。「見たい」と言うので自分の顔としてSの写真を送った。「そんなことないかっこいい」と喜ぶYに鼻白んだが「そういってもらえると、嬉しいけど」と返した。  その後で「こうやって、Yとゲームができるのも、後少しだからな。楽しみたい」と思わせぶりなことを言った。「どうして」とうろたえるYに「もうすぐ、夜が自由じゃなくなる予定」と告げた。 「リアルより、ネット上の関係の方がずっと大切でも、結局、届く範囲のものしか手に入らないんだ」Yは何も返してこなかった。僕はSNSからログアウトした。  そしてブログを綴った。  暗号のような詩のようなわけのわからない言葉を並べた。 『もしぼくらが出会える距離にいたなら、君のための勇者でいられたかもしれない。ぼくらの人生は冒険のように興奮に満ちただろう。出会えるのに出会えないこの不思議な世界のはざまでどれだけ苦しんだか。それももう終わる。これは未来の喪失だ』  
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