2025年 初夏 六花 1

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配架したい場所には常に利用者がいる、というのはどこの図書館でも同じなのらしい。それはそうかと思う。人気のある本だから頻繁に借りられてこうして返却されるわけだし、新たに借りようとする利用者がその書棚の辺りをうろついて物色するのだから当然の流れだ。 ああいう小さい子を見ると六花は自分の子供時代を思い出す。 大人しくて、無口で、気が弱くて。けれど本だけは夢中で貪るように読む子供だった。本の中の登場人物には割と六花のように孤立していて本の虫というような少女が多く、なんとはなしに安堵したものだ。 この児童書のコーナーにずらりと並ぶ背表紙のタイトルを、既に六花はほとんど子供時代に読破した。後で知ったことだが、司書の基本的な資格を満たす条件のひとつは蔵書の内容を熟知していることなのだという。『昔読んだ小説でこんな一文があったのだが、あの本は何というタイトルだろうか』、という利用者の問い合わせに自動検索機能はほとんど用を成さない。そこに決してコンピューターが担えない、司書の存在価値がある。 だからといって六花が有能な司書かといえばそうでもない。カウンター業務などはいかにも辿々しく、有能どころか見習いアルバイト同然である。 時々思うのだ。 あの頃読んだ物語の内気な少女たちは、どんな大人になったのだろうかと。彼女たちは、ごく自然に内気を克服して社会に溶け込んで難なく職に就いて、普通の生活を送れているのだろうか。     
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