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プロローグ
銀河のようだったので、心の内で燥いだ。
燥ぐ、という語源は『乾燥』から来ているそうだ。
言われてみれば確かに、木枯らしに煽られてカラカラと賑やかに騒ぎ立つ乾いた落ち葉は燥いでいるさまによく似ている。思えば、そもそもの乾燥という言葉もまた徹底している。乾き、さらに燥く。拾い上げようものならたちまち粉々になってしまう。
左記子の胸の内には普段から落ち葉のような乾いたものが無数に散らばっていて、今それがごちゃまぜにかき混ぜられている、そんな心持ちだった。嬉しさに混乱と興奮が混じり合ってざらざらと落ち着きなく騒ぎ立つ。
未体験の事象に対する空想は、ときに狭量なものになってしまうことがある。
本来空想というものは、大きさに制限がない。どこまでも拡がっていく性質を持っている。けれど、あまりに知らなさ過ぎて思い巡らせているその対象の方が、ずっとスケールの大きなことがある。まさに今目の前に展開されている光景が──それだった。
銀河のように見えるのは、ほんとうは電車内から見た、隣町の夜の灯りなのだった。
銀河。
その単語がまさしくぴったりだった。
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