恋をする生き物

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「明日香! こっち!」  健はパンフレットを持つ右手を高くあげ振ると、言った。  その声に、明日香は、キョロキョロと周囲を探すしぐさをしたが、すぐに健を見つけたらしく、こちらに向かい近付いてくる。 「秋野だよ。明日香は覚えてるだろ。小学校が一緒だった。ばったり会っちゃってさ」  健達のそばまでやって来た明日香に、確認するように健は言う。  秋野はきっとちょっと度忘れしているだけだ。顔を見れば絶対思い出すはず。  一瞬様子を窺うように、二人を眺めていた明日香は、すぐに気を取り直すと、健の言葉に、うん。と小さく頷く。その後、自然に隣にいる秋野の方に静かに目をやった。  それまで秋野は明日香を不思議そうな顔で見ていた。  だけど、明日香と目があったその途端、秋野の目が輝いたように光った。  瞳の中を光の渦が回る。そして流れた、無数の星屑達が。 「明日香! そうだ明日香だ! 俺何で忘れちゃってたんだろ。久しぶりだな。相変わらずお前達仲良いんだな」 「うん。久しぶり。秋野君は、元気だった?」  急に、目の前で、会話を始める二人を健はおかしな気持ちで見つめた。  今、確かに、秋野の目が変わった。それまで全然覚えがないようだったのに、急に思い出したように、話し始めた。  目があったから? じゃあ、あの光は? 健の見間違いでは、決してないはずだ。 「健? 映画始まるよ」  気付くと、もうそこには秋野はいなかった。  明日香は、健の手を引くと、映画館のある方へ向かって歩いて行く。 「あの……明日香? さっき俺、秋野の……」 「後でちゃんと話すから。今は何も言わないで」
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