恋をする生き物

6/12
前へ
/12ページ
次へ
 その後どうやって過ごしたかは明確には覚えていない。  幼馴染だという明日香と母に混ざり、健は夕食についた。  健の大好物のクリームコロッケと、タコと大根の煮物が食卓にはあった。  おいしそうにそれらを食べる明日香は、健の家の隣に住む幼馴染のはずなのだが、それ以上は彼女がどんな人物なのか思い出せなかった。  頭痛のせいかな?  先ほど明日香が触れた頬に手をやる。  割れそうなほど痛かったのに、何故か明日香が触れたらすぐに治った。 「まだぼうっとしてるの? せっかくあんたの好きな物作ったのに。張り合いないわね」  箸も付けず呆ける息子にため息をつく母の声が、ひどく遠くに聞こえた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加