恋をする生き物

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 その瞬間は突然やって来た。  ある日、受験も無事終え後は、卒業を待つだけの身になった健は、明日香にせがまれショッピングモールにある映画館に来ていた。 「堀越じゃん! 久しぶり!」  チケット買い終え、映画が始まる時間までその辺の店をうろついている時だった。振り返ると、休日なのに制服を着た男子がいた。 「もしかして、秋野? うわ! マジ久しぶりじゃん!」  その懐かしい旧友の顔に健は、嬉しさでいっぱいになった。  秋野は小学校が同じで、その当時結構仲が良かった。私立の中学に彼が行ってしまうまでは、よく遊んだりもしていた。  近所に住んでいるから、例え学校が違くとも会えると思っていたが、生活サイクルの違いからか、ずっと会うことは叶わないでいた。 「三年振り? 本当偶然だよな! 今日は何? 映画観に来たのか?」  健の手元のパンフレットを見つけ、秋野は言う。  思わず健は、それを隠した。 「まぁな。俺は興味はないんだけど。明日香がどうしても観たいって言うから」  あくまでも、自分は付き添いなのだと強調するように健は言う。  かつての男友達に、恋愛映画など観るんだと思われるのが、恥ずかしかった。 「明日香? お前彼女出来たの? いいなー。紹介しろよ!」 「いや、彼女じゃなくって。秋野も覚えてるだろ? 小学校同じだった、ほら、俺の隣の家に住んでいる幼馴染の工藤明日香」 「工藤? お前にそんな幼馴染なんかいたっけ?」  秋野は全く思い出せないというように、首を傾げている。  健は、またあの不思議な感覚を覚えた。明日香と初めて対峙する者と会う時必ず覚える感覚。  その時、雑貨屋からちょうど出て来る明日香の姿を見つけた。
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