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「ちょっと諒ちゃん!そのコーヒー僕の!」
「ひとくちもらっただけやんけ。」
諒太は「あーうるさ」と付け足し、ソファにどかっと座る。
キッチンで洗い物をしている怜史はチッと舌打ちをしてシンクの水をキュッと止める。
「コーヒーくらい自分でやってや。インスタントやねんから、お湯入れるだけやろ。」
水を出して洗い物を再開する。
「俺はカップ一杯もいらんねん。節約や、節約。」
たしかに泉家は7人兄弟で常に節約しなければならない状況ではあるが、1番家の事に無関心な兄諒太に言われても何の説得力もない。
洗い物を終えた怜史がダイニングテーブルに置いたままのコーヒーに手を伸ばす。
「ちょ、えっ??」
コーヒーはカップの半分程しか残っていない。
洗い物をする前にお湯をいれて、終わる頃には冷めているだろうとまだひとくちも飲んでいないコーヒーだったのに。
「なにがひとくちやねん!」
怜史が言っても諒太はテレビから視線をそらさず、こたえる気もないらしい。
「あのなぁ、僕はカップ一杯飲みたいねんか。約180mlやな。諒ちゃんが半分の90ml飲んでな、僕は一杯飲みたいから言うてもう1パック使うとするやろ?ほしたら追加で入れた方はホンマはあと90ml分コーヒー出るのに無駄になるんわかる?全然節約なってへんからな!」
「うるっさいな!ほなお前は今からもう1パック使て90mlお湯入れるんか?」
「せえへんわ、そんなこと!なんで今からまた入れなあかんねん。」
「ほな結局俺もお前もコーヒー飲めて、1パックで済んだんやし節約なってるやんけ!」
「つうか僕は節約どうこうを言うてるんとちゃうねん!ひとくちもらった言われて半分減ってるんが腹立つんや!」
「はぁ?ほな俺のひとくちは半分やと思といくれや。細かいやつやなぁ。」
「ほな500mlのペットボトル置いてても、ひとくちもらうわ言うて250ml飲むんや?」
「飲むわけないやろ、あほか。250mlのどこがひとくちやねん!」
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