Bound IT

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車は見知らぬ通りを走り抜ける。 戒斗の肩越しに街並みを追っているけれど、叶多が馴染んだ場所には一向に届かない。 不思議に思いだしてまもなく、反対車線の道沿いは高い塀ばかりになった。 こんな住宅街に企業はないだろうし、これが一軒の敷地だとしたらかなり広いはずだ。 もしかしたら有吏館よりも広いかもしれない。 「戒斗、帰ってる?」 「いや」 戒斗は短く否定しただけでそのさきを云わない。 叶多は顔を上げて躰を離した。 「どこ?」 「蘇我だ」 戒斗は顎で塀のほうを示した。 叶多は目を丸くして塀に目をやり、すぐに戒斗に戻した。 「……どういうこと?」 「わかるだろ。叶多が疑問に思っていたこと、もしくはそうあるべきと思っていたことだ。暗であることが守ることになると信じていた。けど、叶多が云うとおり、犠牲は違う形でだれかが被る。それなら、隠ぺいという小細工をするよりも、堂々と守るほうがいい。やり方を変えればいいだけだ」
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