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「寸分の失態も許されなかったからです。 領我家には真の一族を追い求めさせ、蘇我の血を無効にするほどの忠心を育てるために。 真の一族にとっては、曾祖父故人の遺志によるものではなく、その世代によっての英断を。 その判断を待つがために、探し当て希(コイネガ)いつつもこちらから動けませんでした。 然こそ云え、曾祖父にも迷いがあったかもしれません。 もしこのさきに同じ判断をする者がいるのなら、それは正しいことを保証される、と。 我々有吏一族の末裔は曾祖父から託されたのです。 堂々あっぱれであれ。 我々有吏一族は隠れる必要はない。 蘇我と真っ向から対すべきだと曾祖父は考えていました。 暗でいるという保身のあまり、判断が鈍ることもある。 それゆえ、民に大きな犠牲を強いた。 曾祖父が生涯抱えた無念至極。 いまこの時にそのわずか、報われたのやもしれません」 「曾祖父はじかに表に出るという裁断ができたはずだ」 「ご存じのとおり、有吏一族の多くは戦地に散り、衰退していました。立て直す時間が必要だったのです」
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