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「いつ……戒斗はいつそう考えるようになったの?」
「たぶん、叶多が疑問に思いだしたときからだ。那桜が犠牲になって、母さんがかつての犠牲者だと知ったとき。そうだろ?」
叶多はびっくり眼で間近にある戒斗の瞳を見つめた。
たしかにそうだけれど。
「戒斗には隠し事できなさそう」
「そうできるんならおれもラクだけどな。そうじゃなくて、考えられる範囲が広がっているんだと思ってる」
意味がわからなくて叶多が首をかしげると、戒斗は可笑しそうにした。
「叶多のせいで、おれの中にまったく別の世界が拓けてる」
「……いいこと?」
「それはこれから次第だ。責任は負うことになる」
もっともに堅実な答えだ。
不安に思わなくはないけれど、大事なことで考えが通じ合っているということはうれしい。
そこまで考えて叶多ははたと表情を止めた。
戒斗の考えがすでに叶多と同じだったとしたら。
「……もしかして今日のあたしの行動ってホントに無駄だったの……?」
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