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「わたしと拓兄が帰ったら、しばらく大所帯だよね、お母さん」
「六人じゃ、大所帯って云うほどじゃないわ」
「でもにぎやかになりそう」
「たまにはそうしてちょうだい」
詩乃は首をかしげてさりげなく強制した。
その後、那桜のところには長居することなく、詩乃を連れてお暇した。
病室を出たあと、いきなり診察室に連れていかれたときは驚いたものの、戒斗の気がすむならとおとなしく受けた。
叶多に付き添った詩乃は、事の次第を知っているらしく、無事でよかったわ、とため息をこぼした。
加えて、美咲が切った髪に触れて、あとでわたしがそろえてあげるわ、と云いだす。
美咲といい詩乃といい、叶多の髪を物欲しげに――いや、手出ししたそうに弄られると、このふたりにもペット扱いされているんじゃないかと疑った。
すぐに終わった診察の結果、少しの打ち身はあるけれど異常はない。
そんな診断が出たにもかかわらず、戒斗は安心したふうでも気にしたふうでもなかった。
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