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……心臓から血管を通って、体のすみずみにまであたたかい血が流れていくその感じを、いま生まれてはじめてちゃんと味わっていて。
こんなの、鋭い刃物で指先をうっかり切ってしまったときくらいしか、感じたことがない。
体のどこにもそんな切り傷なんてないのに。
だから、現実感がないのだった。
いままで、自分の体にこんなに頓着せず生きていたのだな……と。
新しい感覚は、知らなかったことをはじめて知るときの高揚感を連れては来なかった。
ただ、ゆっくりとした一定のリズムで体の奥底をぐいぐいと突き上げられて、痛いはずなのに深い酩酊と薄らぐ自我がたまらなく婀娜やかな自分を浮き彫りにする。
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