彼の欲しいもの

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   バスルームでほどよく蒸されたあと、賢治郎は足りないとばかりにあたしにまたのしかかったのだ。  全身だるくて痛いところもあるのに、なぜか逆らえなかった。  つまりこれが、いまのあたしにとっての強烈な非日常。  たった数時間前まで、品行方正な女教師だったはずなのに。  そんな違和感さえも今は官能に油を注ぐ。  組み敷かれ、ときどき上に乗せられながら、ただ彼の首っ玉にしがみついてみっともないほど乱れた。  自分がこんなにむき出しの女になれる女だとは思わなかったのだ。  なにより欲しくなるのは賢治郎の唇だった。  一見薄く、情のない男と思わせる形をしているくせに、いざ吸いついてみると妙な弾力にうっとりとしてしまう。 .
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