彼の欲しいもの

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   ときどき目が合って、その折檻とばかりに彼の頬を軽く手のひらで打ってやった。  お返しに強く突き込んであたしに悲鳴を上げさせるのが彼からの報復であり、謝儀でもあった気がする。  漏れ出る声以外、なんの言葉も口にしていないというのに、互いの思いはいやというほど行き来した。  二度目なぶん、遠慮もなにもない。  やがてあたしが本当になんの思考も意思も持てなくなるまで、賢治郎はそれをやめなかった。  その夜彼がいつどんな体勢で果てたかなんて、あたしは知らない。  ただ、賢治郎のただならぬ深い悲しみだけが、しっかりと刻まれて。 .
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