始まりの色

8/29
前へ
/454ページ
次へ
生活費は、おじいちゃんが出してくれていて、お父さんからも私の養育費が払われているみたいだから、働かなくてもいいんだって、お母さんは言う。 だけど、学校の友達で、親が離婚している家は、お母さんが頑張って働いているし、ちょっと不思議だった。 「うちは困ってないから」 というのが、お母さんの口癖。 確かに、おじいちゃんはそれなりに裕福みたいだけど、特別リッチなわけじゃないと思う。 だって、一緒に住んでいる伯父さんの奥さんは、働きに出ているし。 それに、私は幼稚園も学校も、普通の公立だ。 お母さんの考え方は、ちょっとわからないところがある。 今まで一度も働いたことがないからなのかな? 真理子さんは、早くに旦那様を亡くして、学校の先生をしながら、航平さんと行成さんを育てたんだって、お父さんが言っていた。 その行成さんは、私たちの少し後ろを歩いている。 お父さんが、まだ私の手を握ったままなのに気付くと、急に子供っぽい気がして、手を離した。 お父さんはちょっと寂しそうな顔をしてから、真理子さんと話しだした。 私は歩くペースを緩めて、行成さんに並ぶ。
/454ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加