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「あの、行成さん、は……」
「さんづけとか、いらねーよ」
ちょっと気だるげに言ってから、彼は私を見てニヤッと笑った。
「お兄様、とか?」
「む、無理です!」
「じゃあ、好きに呼べばいいよ。
でも、敬語はなしな」
その時、前を歩いていた真理子さんが振り向いた。
「あのね、香純ちゃん。
この子、妹ができるってすごく喜んでたのよ。
ほら、航平とは9歳も違うし、下に兄弟もいないから、寂しかったんじゃないかしら」
「ばっ、何言ってんだよ、おふくろ!」
少し顔を赤くして、真理子さんにくってかかる行成さんは、少し幼く見えた。
妹、なんだな、私。
それは、今まで一人っ子で来た私に、いきなりプレゼントされた年上の家族。
胸の中にじんわりと温かいものが広がる。
「それじゃあ……ゆき兄さん?」
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