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シャワーを勢いよく出して、頭から流すけれど、ゆき兄さんの温度は、なかなか消えないみたいだった。
こすってもこすっても、彼が触れた私の肌が、記憶したがっている。
ダメなのに。
許されないことなのに。
改めて、自分がしたことに、罪の意識が強くなった。
「……ごめんなさい」
流し切ったはずの涙が、またあふれる。
シャワーを止めて、曇った鏡を手のひらでこすった。
ぼんやりと映るのは、濡れ鼠のような情けない泣き顔。
そこに見える、妙に赤い唇に触れた。
しょうこさんの名前を呼びながら、彼が重ねた場所。
どんな女性なんだろう。
いつか、彼は本当にその彼女に、私と同じことをするんだろうか。
そう思うと苦しくて、あのまま、抱かれてしまえばよかったと思う自分に、また、嫌気がさしてしまう。
こんな私、嫌だ。
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